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ホロホロと泣いた。矮小な魂が残酷な現実を受け入れられない

今日はとても暑かった。

 

駅から遠い場所にある本社で面接を受けて方が、あまりの暑さに参ってしまった。

帰りはまた満員電車。

もう暑くてヘトヘトで、駅を降りて少しホームで休んでいた。

隣に女の子が座ってきて、私と同じく涼んでいた。

黄色い帽子に制服姿でランドセルを担いでいたので、私立の小学校に通っているのだろうということはわかった。

まだ小さいのにこんな満員電車に揺られて大変だなと思った。私が小学生の頃は道草をしながら歩いて帰っていたなぁ。

 

女の子が水筒でお茶を飲むのを見て、急に喉が渇き、私も負けじと持っていた温いキレートレモンを飲み干した。とても不味かった。

お互いに持っていた飲み物を飲んでなんとも言い難い微妙な雰囲気に包まれた。

なぜかよくわからないが、気まずくなってしまったので、改札へと階段を登って行った。

 

講義があったので、学校へ向かい1時間だけ受けて帰る虚しさを抱えながら帰路へついた。

その途中で公務員志望の友人に偶然出会い、色々話して帰っていたが、彼ともあと数ヶ月で合わなくなってしまうんだなと感じた。

 

駅に着き、電車に乗ると続々とおじいさんやおばあさんが乗ってきた。

 

すごく元気だ。

70代ぐらいだろうか。

とても楽しそうに談笑していた。

 

電車内はスマホをいじり死んだ目の若者とすごく元気で誰とでも気さくに話しかける高齢者が対比的に映し出されていた。

 

なんだか、老齢者の方が人間らしいな。そう感じた。

 

帰りの駅へと近づき、立ち上がる。その高齢者たちもどうやら同じ駅で降りるようだ。

 

すると一人のおじいさんに話しかけられた。

 

「まだ遠くですかね?」

 

いや、この駅で降りますよ。

 

「そうですか、何をされているんですか?」

 

今大学生で、来年から社会人になります。

無事に就活も終わりまして(内定はあるが、実はまだ選考中ではある)、仕事があって良かったです。

 

「学生さんかね。これから素晴らしい人生があるからね。それじゃあ。」

 

あぁ、ありがとうございますぅ。

 

久しぶりに友人や家族以外と話した気がして少し心が温かくなった。

しかし、私に素晴らしい人生はあるのだろうか。

 

あのおじいさんはとても楽しそうだった。

ただ、会話の中ではもっと色々なところへ行ってみたいという感情があったようだ。

もう一人のおじいさんが旅行へ行くのを羨ましそうにしていた。

 

素晴らしい人生か。来年には社会人だ。きっと辛いだろうな。

 

私はなぜか社会人になることはとても辛く、人生が終わると考えていた。

 

本当かもしれないし、嘘かもしれないが、そう思い込んでいた。

 

ネットには仕事辛い、辞めたい、働きたくないという言葉で埋め尽くされている。

 

怖くて怖くて仕方がなかった。

それに、現在の日本の状況が頭の中をぐるぐるしているのだ。少子高齢化、人口減少、増税、地震…

 

私はあのおじいさんの人生を考えた。

歳は70代ぐらいだろう。

 

私と同じ歳の頃は50年も前ということになる。

私の父の話によると50年前は本当に今当たり前にあるものは何もなくて、みんな農業を営んでいた。

車もない、テレビもない、電話もない。

あるのは田んぼと牛。

私の父が幼い頃は我が家でも牛を飼っていたそうだ。

元から農家ではあったが、一般家庭が当たり前に牛を飼っているとは今では想像もつかない。

 

そんな時代にそのおじいさんは20代を過ごしたのだ。

そんな時代から現代。きっと天国のように見えるのかもしれない。みんなが小型の高才能コンピューターを持ち歩き、キツイ重労働から解放され、生活はより便利に豊かになった。

今の社会が素晴らしく見えるのも無理はない。

 

テクノロジーは指数関数的に発展しているので、私があのおじいさんと同じ年齢になる頃にはもっと世界は変わっているはずだ。

人類のあり方自体が変わっているかもしれない。

 

その時になぜかうるっときた。いや、ホロホロと泣いたかもしれない。

なぜかわからないけど、涙が出た。

 

私は時間が過ぎ去るのが怖い、怖くて仕方がない。

 

あのおじいさんも20年後には生きてないかもしれない。

親も同じだ。

自分が知っている人がいなくなるのが嫌で仕方がない。受け入れられない。

 

年老いていくのもとても怖い。

私は自立することだけを考えていたが、誰かを養うことなど考えていなかったし、考えたくなかった。

 時間は残酷にも刻一刻と過ぎ去っていく。

それを私は否定しようとした。

誰かを守らねばならなくなるのが怖い。

知っている人がいなくなるのが怖い。 

 

だから、あの女の子から逃げた。

だから、おじいさんと話して泣いた。

 

矮小な魂が残酷な現実を受け入れられないのだ。

 

 

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